だからボクは君と会う。

 はらり、ひらり。舞うように落ちるソレは、ただ雅なるもの。そしてそれを眺め、梟は溜め息をついた。
 一年も前のことだ。けれど、梟にはそれが昨日のように思い出される。目の前には一本の樹。ここで梟は『梟』に出会った。麾下にするものたちに鳥の名を与える権利を貰ったのだ。いつまでも傍に居続けてくれる、鳥たちがいる。それだけで梟の心は満たされていた。

「待ったかい?」
「うん」
「え、正直」
「やだなぁ、お茶目な冗談だよ」

 梟の傍に駆け寄る青年は『梟』だ。今は本名で呼ばれているが、梟はそれを知らない。彼のことを呼ぶとき、梟は必ず先代と呼ぶのだ。
 いつも傍にいる鳥たちは今日、梟の傍にはいなかった。そもそも梟が出かけることすら知らない。恐らくは今頃家で大慌てしていることだろう。それを思うと、笑いが込み上げてきた。

「思い出し笑いか?」
「今頃大慌てしてる皆を想像したの」
「なぁる。この一年、お前らの噂で持ちきりだぜ?仲が良過ぎるってな」
「そう?先代は違った?」

 梟の問いに『梟』は一瞬黙った。自分の時代はどうだったろうか。そこまで仲が良かったような覚えもないが、どうも自分の鳥たちは自分を苛めるもといからかってくる癖があった。それを他人の視点から見ればどうだったのか、想像もつかない。
 黙りこんだまま答えを出さない『梟』に梟は小さく笑う。実際梟が梟に就く前、一年間しか『梟』の時代を見ていないが大層仲が良かったように見受けられた。

「あら、早いじゃない」
「あ、初代」

 延々と悩む『梟』と時折笑う梟の傍に一人の女性が歩み寄る。相当美人の部類に入る彼女の本名を梟は呼ばない。彼女は初代梟。監査という組織を作り上げた、根幹の女性なのだ。
 初代は梟を見て微笑み、そのまま視線を流し『梟』を見て目を見開いた。『梟』は未だ苦悶の表情を浮べたりしている。

「はろー四代目。で、三代目はなに悩んでるわけ?」
「鳥と梟の仲がどれだけ良かったか、を考えてるよ」
「私の時代じゃないしねぇ…。でも仲良かったんじゃなぁい?三代目時代の噂は鶺鴒(せきれい)が集めてたけど、仲が良かったみたいよ?」
「ボクもそう思った。特に川蝉(かわせみ)と一緒のとき」
「へぇ?」

 川蝉は『梟』の鳥の中では紅一点だ。特に仲が良かったように見えたということは、いくらかの恋慕はあったのではなかろうか。梟はそう見ていた。

「付き合ってないのが不思議ね」
「川蝉留学しちゃったしね」
「告ったのかしら?」
「意外と度胸ないよ先代」
「意外、じゃないと思うわ。ヘタレよあれはどう見ても。ところで…」

 川蝉の話題をしながら『梟』を見ることに飽きたのか、初代は周りを見渡したあとに梟に視線を向けた。問いかけの姿勢だ。

「四代目の鳥は?」
「家にいるよ。皆気後れしちゃうと思うし」
「誰に?」
「初代に」
「…雲雀はそんなはずないだろうし、四代目の鳥たちは皆度胸据わってるじゃない…」

 深々と溜め息をつく初代の隣で、『梟』は未だに悩み続けていた。

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